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本当の美しさを求めてーかぐや治療院

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iPS細胞研究の展望

iPS細胞研究の展望について

iPS細胞にはES細胞と同じ2つの大事な特徴があります。
1つは、ほぼ無限に増殖できるいくらでも欲しいだけ増やすことができるということです。
そしてもう1つは、骨の細胞や神経の細胞など体のほぼ全ての細胞に変化できるということです。この2つの特徴についても様々な研究がなされています。例えばどのような初期化の方法がより品質の良い安全性の高いiPS細胞作製につながるのかといった基礎的な研究について、またiPS細胞がほぼ全ての細胞に変化できるということは免疫機能のないマウスにiPS細胞を移植をしてテラトーマという腫瘍ができることによって知られているわけですが、生体の外でそれぞれの細胞を選択的に作り出す技術は全ての細胞で確立されているわけではありません。

必要な細胞をiPS細胞から作り出すための研究も続けられています。
次にこうした基礎技術をもとにどのような医療応用に向けた研究が行われているのかについて
ご紹介していきたいと思います。
iPS細胞の医療応用研究として1つ目にご紹介するのが再生医療です。

再生医療とは病気や怪我などでうまく働かなくなったり失ってしまった組織などを作って移植をすることによって身体の機能の回復をはかる医療です。
ここでは例として心臓がうまく働いていない患者さんの場合を考えてみましょう。

iPS細胞は血液の細胞からも作ることができます。採血で血液の細胞を取ってきてこれを因子を加えiPS細胞を作ってあげます。そしてそのiPS細胞から心筋の細胞を分化させるわけですね。これをたくさん増やすことはできますのでその心筋細胞をたくさん作ってシート状にするとこれを心臓に貼りつけて移植することによってうまく心臓が働くようになるといった具合です。この動画が実際にヒトの皮膚の細胞からiPS細胞を作ってそれから心筋の細胞に分化させたものです。拍動している様子が分かりますね。
心臓ではないんですけれども加齢黄斑変性という目の疾患ではiPS細胞を使った世界で初めての臨床研究がおこなわれました。

これは実際の患者さんでこの治療法は安全であるのかというのを確かめる試験ですが理化学研究所の高橋政代先生を中心としたグループによって2013年からおこなわれています。

2つ目のiPS細胞の医療応用研究は毒性の検査です。新しい薬を開発する過程ではその薬が重篤な副作用を起こさないか見極めることが大切です。このような評価のことを毒性評価と言います

ここでは主な2つの例を出していますが、1つはiPS細胞から心筋細胞を作ってそこに開発している薬剤を加えることによって不整脈が起こってしまう等の心毒性があると分かればその候補薬は今後の開発ステップから除外することができます。

また薬剤は肝臓で代謝されるわけなんですがiPS細胞から作った肝臓の細胞で毒性があると分かればこの候補薬も開発から除外することができます。
iPS細胞はいくらでも増やすことができますのであらゆる候補薬の毒性を体の外で試すことができます。
3つ目の医療応用研究は病態の解明です。iPS細胞は一人ひとりから作ることができるのですがそのiPS細胞や分化させた細胞はその人の遺伝情報をそのまま持っています。

ですので遺伝的な要素の多い疾患ではその情報をiPS細胞とか分化させた細胞でも持っているわけなんですね。

ここでは神経の病気を例に考えてみましょう。神経の病気を持つ患者さんからiPS細胞を作り
そこから神経細胞にしてあげます。そうするとその神経細胞は病気に深く関わる遺伝子を持っているのでこの病気の状態を再現することができると考えられます。

健康な人ではもちろんそのような遺伝子がないため正常な神経細胞ができます。
そうすると患者さんから作った神経細胞と病気の人健康な人から作った神経細胞を比べてですね、何が違うのかどういったことが体の中で起きているのかといったことそのメカニズムを探ることができるのです。

神経細胞等はですね患者さんから実際にとってきて研究するというのはなかなかできません。
ですのでiPS細胞を使っていくらでも体の外で神経細胞を作り研究ができるというのは大きな利点です。

最後にご紹介するのは創薬研究です。先ほどの例を使いますと、患者さんから作った病気の神経細胞にどのような薬をかけてあげれば正常な神経細胞にすることができるのかとといった候補薬を探すのにもiPS細胞は活躍をします。

iPS細胞やそこから作る神経細胞はいくらでも作ることができますのでありとあらゆる化合物を細胞に振りかけて試すことができます。もし症状を改善するような化合物があればそれは今後、薬となる候補となります。こうした候補物質の絞り込みを創薬スクリーニングと言います。

これをより効率的に行うにはどのような機材が必要なのか、といった研究開発も盛んにおこなわれています。
なお、これは第4週でご紹介するんですけれどもこれまで解説したような医療応用研究の進展に伴って倫理的、法的そして社会的な課題が発生してきています。

そのような課題の研究もiPS細胞研究の一分野として発展が望まれています。
今回はiPS細胞を使ってどのような研究が今後考えられるのかその展望をご紹介しました。

次に、より安全で使いやすいiPS細胞を目指す研究をご紹介した後第2週、第3週では、いよいよ今回ご紹介した医療応用研究の具体例の解説に入っていきたいと思います。


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